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□ はるみち □

運命3

トクン、トクン、トクン。
心臓は、規則正しく。
トクン、トクン、トクン。
生きている。


僕は、まだ、生きている…。


ヒューン、ヒューン
風を切る音。
ツーンと、タイヤの焼ける匂い。
生と死。
隣り合わせの世界が、
僕を・・・生かす。


「~♪」
軽いテスト走行を終えた。
仕上がりは、順調。
いい感じだ。

「・・・・・・・・・。」

ヒューン、ヒューン
ライバルたちのマシンの音。
変わらない日常があった。
そう、あの夢のことも、
みちるという女の存在も。
ただの夢。
そう片付けられる程に、
落ち着く瞬間。
・・・のはずだった。
『ゥ・・・うぅぅぅ・・・。』



「?・・・だれかいるのか?」



その日常と言われるものは、
ガラガラと崩れ去った。
とても、あっけなく。



「・・・はい、はい。すみません。
・・・よろしくお願いします。」

静かに、なるべく音を立てないように受話器を置いて、そっと近寄り、ベッドにもたれる形で、腰を下ろす。

「・・・っ・・・・・・」

傷が痛むのだろう、眠ってはいるが、たまに乱れる呼吸。
昔、もらった鎮痛剤を、残しておいて良かった。
そんな風に思いながら、
はるかは、うな垂れるように目を硬く閉ざした。


『ごめんね・・・こんなこと、いうつもりじゃ・・・ごめんね・・・。』
「・・・・・・・・・。」


夢であるなら覚めてほしい。
これは、悪い夢なのだと。


『・・・これが、現実だ。』


もう一人の僕が言っている。


ベッドのサイドランプで、
鈍く光る。


ソレを手に取る。


「・・・・・・・・・・。」


どうしたらいい?
僕は、どうしたら・・・。


“プルルル”


「―――。」
電話の音に、
ハッとして顔上げる。
時計を見ると、電話をしてから、
すでに一時間ほど経過していた。
「はい。はい、今開けます。」
オートロックを解除して、数分後、インターホンがなった。

***

「傷は大きいけど、あまり深くはないね。応急処置もちゃんとしてあるし、大丈夫、時間はかかるけど、傷跡も残らないよ。」
「・・・そうですか。」
処置を終え、道具を片付けつつ続ける。
「ただ、少し熱が出るかもしれないね。鎮痛剤は、あまりにも酷いようならあげて。」
「はい。」
「・・・・・・大丈夫かい?」
「え?」
急に、目を真正面から見つめられ、はるかは大きく目を見開いた。
「はるか君もちゃんと休むんだよ・・・顔が真っ青だ。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
目を伏せたはるかに、主治医でもある中澤は、それ以上何も言わなかった。
「それじゃ、私はこれで。」
「はい、ありがとうございました。」
深く頭を下げたはるかの肩を、ポンとひとつ叩いて、彼女は、帰っていった。
氷水の入った桶とおしぼりを持って、部屋に戻ると、みちるが目を覚ましていた。
「・・・・・・っ・・・。」
痛みに眉を寄せ、額に汗がにじむ。
「・・・・・・・・・。」
「てん・・・。」
「何も言わないで、大丈夫。」
「・・・・・・・・・。」
ひんやりとしたおしぼりで、
額の汗をぬぐう。
すぅっと、みちるは、眠りに引き込まれていった。
「・・・・・・・・・。」
それを確認してから、小さな手をとって、そっと包み込むように握り締める。



どうしたらいいのか。
どうすればいいのか。



自分よりも一回り小さな少女。



細い腕、華奢な背中。



僕が、何をするべきなのか。
答えは―――。



「・・・・・・・・・。」



ランプの赤。



カーテンの隙間。



月明かり。



「・・・・・・・・・。」



涙が、一粒。



みちるの頬を濡らした。



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Date:2010/02/12
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