へぶんずぷれいす

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□ はるみち □

運命5

決断の時は、迫っていた。
君と出合ったことで、急速に。
君に助けられたことで、早急に。


あの日から、一週間が経った。


「傷は、大分、塞がったようだね。」
まだ、痛むかい?
と、問うはるかに、みちるは首を振った。
「・・・・・・よかった。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・海に行こうか。」
「えっ!?」
はるかの言葉に、みちるは顔を上げる。
はるかは、その視線を真っ直ぐ受け止めて続けた。
「僕の運転で、海辺を走りたい。
って、言ったよね。」
「・・・・・・・・・。」


『一度でいいから―。』


みちるは、目を伏せ、頷いた。


ザーン、ザーン・・・
波の音が、絶え間なく繰り返される。
ゆったりとしたスピードで、
はるかの運転する車が、
沿岸を走っていく。

初夏の海水浴には、まだ、少し早い季節。
がら空きの駐車場に車を停める。
窓の外、きらきらと光る海を、みちるは、目を細めて見つめる。
はるかは、横目でそれを見てから、車を降りて、助手席のドアを開く。
「歩ける?」
「・・・ええ、大丈夫よ。」
みちるは、差し出された手のひらに、一瞬の躊躇の後、その手を重ねた。
そのまま手を離さずに、はるかは、みちるの手を引いて、歩き出す。
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
言葉はなく。
ただ、ただ、穏やかに。
ゆっくりと、砂浜を歩き、海に近づく。
波打ち際で、足を止める。
そこで、繋がっていた手が、自然と離れる。
みちるは、その離れた手の感触を、確かめるように、反対の手で、軽くさすった。
「・・・海王さん。」
ふいに名前を呼ばれて、みちるは、隣に立つはるかを見上げた。
「君は、ヴァイオリニストになるのが夢だといってたよね。」
海を見つめたままの、その横顔。
「・・・・・・・・・。」
「僕は、トップレーサーになるのが夢だ。」
波の音に混じって、びゅぅっと風が吹きぬける音がした。
「・・・知っているわ。」
「あはは。・・・そうか、僕より僕を、知っているんだったね。」
くしゃりと崩した笑い顔は、まだ、幼さを残して。
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
海から視線をはずし、はるかは、みちるに身体ごと向き直る。
「・・・僕は、君の事を何も知らない。」
「・・・・・・・・・。」
「ずっと、ずっと考えてたんだ。
君に、助けられて、僕のせいで、
君に―。」
「――・・・天王さん。」
「・・・・・・・・・。」
「あなたは、何も悪くない。」
「・・・・・・・・・。」
「あなたは、このまま、何もかも忘れて、このまま・・・。」


――何もなかったのだと、
あなたの道を生きて・・・。
かち合った視線。
逸らさずに、告げる気丈な彼女。
風が、二人の間を通り抜け、
はるかは、困ったように苦笑いを浮かべ、そして告げた。

「それは、無理だ。」

どうしようもなく臆病で、
逃げてばかりいたけれど。

「・・・天王さん・・・。」
「みちる。」
「――――っ!?」

逃げてばかりじゃ、
何も始まらない。

「僕は、・・・僕も戦うよ。」
「・・・・・・・。」
「君と・・・。」
「・・・っ・・・・・・はる・・・か。」


ぼろぼろと零れた。
大粒の涙。
みちるの頬を伝い。
はるかの指先を湿らせ。
白いシャツに染込んだ。


「君を、もう二度と一人にはさせない。・・・だから―――」


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Date:2010/02/12
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